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A New Year’s Dream for Iris

  • 2026年1月1日
  • 読了時間: 3分

 

 2025年、12月31日の夜。


 窓の外では冷たい風が吹いていましたが、家の中は暖炉の火でオレンジ色に満たされていました。


 年越しの準備をすべて終えたアイリスは、お風呂上がりのポカポカとした体で、ソファに深く腰掛けていました。

 手元にあるマグカップには、たっぷりのココアと、ぷかぷかと浮かぶ真っ白なマシュマロ。


「パパ、まだかなぁ……」


 お仕事に出ているパパの帰りを待ちながら、ココアの湯気の向こう側を見つめていた、その時です。

 

 ――カサリ。 外の庭の方から、何かが動くような音が聞こえました。


「……パパ?」


 アイリスは恐る恐る立ち上がり、重たい扉をゆっくりと開けました。

 そこにいたのはパパではなく、一頭の馬でした。アイリスの髪と同じ、透き通るようなブロンドの毛並みを持った、とても綺麗な馬です。


「迷子さんなの……?」


 アイリスがそっと近づくと、その馬は優しく鼻を鳴らし、アイリスに背中を向けました。

「さあ、乗って」と誘っているかのように。


 初めての乗馬に少しだけ足がすくみましたが、馬の瞳があまりに穏やかだったので、アイリスは勇気を出して、その広い背中にそっと跨がりました。

 

 歩き出した馬は、次第に速度を上げていきます。 夜の草原を風を切って走る感覚に、アイリスの胸は高鳴りました。

 やがて前方には大きな湖が見えてきましたが、馬はスピードを緩めません。


「わっ、このままだと落ちちゃう……!」


 アイリスが思わず目をつぶった瞬間、体がふわりと浮き上がりました。


 おそるおそる目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていました。

 蹄が踏み締めているのは地面ではなく、澄み渡る夜空。眼下には、宝石を散らしたような街の明かりが繊細にきらめき、星々がすぐ手の届くところで踊っています。


「すごぉい……! お星様とお散歩してるみたい!」


 アイリスは夢中になってその景色を見つめ、愛おしさが溢れて、温かな馬のたてがみに顔をうずめてぎゅっと抱きしめました。


 やがて馬は、世界で一番空に近い場所、静かな丘の上へと降り立ちました。

 遠くの地平線から、ゆっくりとオレンジ色の光が溢れ出し、2026年の最初の太陽が顔を出します。

 その神々しい光に包まれながら、アイリスは心地よい揺れの中で、いつしか深い眠りに落ちていきました。



 ……。

アイリス2026

「ん……むにゃ……」


 次に目を覚ました時、アイリスは自分のベッドの上にいました。

 腕の中には、あたたかくて大きな、ニンジンの枕。


 ふわりと、パパのコートと同じ冬の夜の匂いが部屋に残っていました。


 きっと、帰ってきたパパが、眠っているアイリスをここまで運んでくれたのでしょう。



 アイリスは眠気眼をこすりながら、窓を開けました。

 差し込んできた眩しい新年の光を全身に浴びて、彼女は心の中でそっと願います。


「2026年も、大好きなみんなと、もっともっと楽しい物語が紡げますように!」


 抱きしめたニンジンの枕は、なんだか昨夜の馬の背中のように、あたたかでした。



-Little Flower Project-

 
 
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