

母を知らず、父を知らず、自分の幼い記憶すら持たない少女――
彼女は、祖母と一緒に自給自足をしながら、天界の辺境で静かに暮らしている。
そんなある日、森の中で倒れ込んでいる天使の少女を見つける。
気を失っている少女は翼を怪我しているようだった。
手当をしようと近づいたルナだったが、少女は目を覚まし、ルナのみすぼらしい姿見て『悪魔』だと言って石を投げつける。
ルナは普段から服も翼も薄汚れていたため、自分自身も『本当は悪魔なのでは?』と思うようになっていた。
投げられた石で額から血を流しつつも、涙をこらえて家路へと急いだ。
それから数日、またも森で天使の少女と出逢う。
以前とは別の子だったが、その場を逃げるように立ち去ろうとするルナを、半ば強引に引き留めてきた。
その少女の赤い瞳は、ルナの瞳を真っすぐに見つめていた。






天界で最も高貴な家柄の娘として生まれた少女――
名声、地位、財力――そして、才能に恵まれ生まれた彼女は、天使学校でも優秀な成績と、気品あふれる振る舞いに、周囲の者は尊敬の意を抱いていた。
しかし、そんなユヲにも悩みがあった――
家族にも、友人にも、世間にも期待されるユヲは、周囲が求めている存在として自分を演じ続けることに、限界を感じていた。
周りからの『期待』というパーツによって、自分が望まない形にカスタマイズされる人形になっていた……
それでも、周りが今の自分を求めているのであれば、ユヲは満足だった。
『これが本当の自分』と日々言い聞かせながら――
そんなある日、友人から辺境の地で悪魔を見たと相談を受ける。
友人数名と共に目撃された場所へと向かったが、そこで出会ったのは、背中に片翼しかないみすぼらしい姿の少女だった。
しかし、その翼は自分のとは違い、根元まで真っ白でとても美しかった――